岐阜市内を走る路面電車が廃線となることが正式に決まりました。環境や人に優しい交通手段として最近になって見直されつつある路面電車を、あえて廃止する決断をしたことに何だか複雑な思いがします。 廃線という結果について、おそらくほとんどの市民の反応は「やむを得ない」というものなのではないでしょうか。路線沿線の住民でなければ、日常的に使うことは殆どなく、反対に交通渋滞を引き起こし車の通行の妨げとなる危ない乗り物と感じる人は多いことでしょう。 路面電車はうまく活用すれば、市民の身近な足として地域の利便性の向上や、中心市街地の活性化に役立てることができます。また日本に残る数少ない路面電車の希少価値を、観光資源として有効に活用できれば、路面電車のもつレトロでノスタルジックな印象も街のイメージアップに役立てることができます。 しかし現在の路面電車のおかれた状況を見ると、残念ながら積極的に残すだけのメリットを見出すことは難しいと言わざるを得ません。車の往来の激しい車道に、安全島もなくただ白線で囲われペイントされただけの乗降場は、誰の目から見ても安全で安心して乗れるようなものではありません。また慢性的な赤字を解消するためには、乗客数の増加が至上命題ですが、現存するルートで乗客数を伸ばすにも限界があり、かといって新規ルートを新設するにも交通インフラの抜本的な見直しに膨大な時間とコストがかかります。 行政は住民との対話を通じて存続・廃止の方向性を探ると言っていたものの、始めから廃線という結果は見えていたようにも思います。「苦渋の決断」とはいうものの冷静に考えれば極めて現実的な判断と言えますが、まちづくりやまちのブランドイメージ創出に有効なカードを自ら捨ててしまうようなものだという思いは残ります。 個人的には80年代後半に廃線となった、旧長良線(JR岐阜駅-柳ヶ瀬-市役所-岐阜公園-長良川河畔を結んでいた主要ルート)のような、駅前や繁華街、観光地を結ぶルートが再びできれば、気軽に乗れて分かり易い交通手段として便利だろうなと思います。路面電車に乗って長良川の鵜飼見物に向かうというのも情緒があっていいと思うのですがいかがでしょう。